2014年3月17日月曜日

LA TERRE / 大地

LA TERRE / 大地

たくさんの果物に目移りして
昼も夜も気が散ってしまう
オレンジがひとつほしいなら、
ここにはオレンジの木ばかりだし、
苗木が一本ほしいなら
果樹園だからよりどりみどり。
君はバラを摘みとろうと
手を伸ばした
大地はそれに無関心で
君は不問に付された。
彼女が胸のうちに思うのは
新しいバラのこと、
泥だらけの栄光の中には
幾千の色が隠れていて
そこでは未来の花々が
まだ色づかぬままに眠っている。

前回の『La Planete』 と同様、こちらも同名タイトルの詩がほかにも存在する。『Gravitations 』 とその前作 『Debarcaderes / 船着場』 に収められた2作は、それぞれに趣が異なって面白い。後者は短いので翻訳して、こちらのブログで紹介できるかも知れない。

この詩にも、シュペルヴィエルに忍び寄る老いの影、死の影が感じられる。11行目、「彼女」とあるのは、もちろん大地のことだ。大地 la terre は女性名詞。前回の惑星も女性名詞であるがゆえに、「彼女」と受けるところがあった(翻訳では生かしていないが)。永遠に生と死を繰り返す大地=惑星に対し、一度きりの人生の終着点に差し掛かっている自分の対比。詩人自身が感じたに違いないであろう心境を、残酷なまでに美しく切り取っている。

Au revoir et a bientot !

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