2012年10月17日水曜日

Avignon / アヴィニョン フランスの似姿 

10/8 17:35 Nice 発 - 21:25 Avignon TGV駅 着

アヴィニョンで見るべきはなにか。

1309年から77年まで、ここに教皇庁がおかれ、都合7人の法王が暮らしたことなど、この街を味わう上で知らなくともよい。それでも、ローマ以外に唯一教皇庁の置かれた場所であるという権威(ステータス)は、キリスト教徒でなくとも惹きつけられる。

その教皇庁の巨大さに圧倒されるもよし、ローヌ川に半ば架かっているサン・ベネゼ橋の追憶に浸るもよし。あるいは街を取り囲む、城壁を回ってみるのも楽しいだろう。

とりわけ城壁は、「見る」というより「見える」という表現がふさわしい存在感があり、建てられたその意味を、現代にまで語り継いでいる。

想定されている外敵の脅威と、なんとしてでもそれを排除しようとする執念の力学。異物を取り除くために行われた奮闘はしかし、効果のほどは疑わしかった。

そもそもこの都市自体、その誕生からして異様なものの受容から始まっており、その集積によって現在まで成長を続けてきたのだといえる。


外からの敵をかたくななまでに拒みながら、自らの内に招き入れて、自家薬籠中のものにする。ここにあるのは、内 - 外 = 味方 - 敵という単純な対立ではなく、すべてが自在に所在を変える、混沌とした葛藤の精神だ。

フランス・ユマニスムの思想に受け継がれていると言えなくもないこの葛藤は、サン・ベネゼ橋を人間関係の綾と読み解くことで、より人間らしいものとなる。これほどまでにひとつの都市が人間の似姿をとっているのも珍しい。まさにこの街で、毎年演劇祭が催されているのも、偶然ではないだろう。

ピカソのキュビズム時代の代表作『アヴィニョンの女たち』に名前を貸しているように、この街は自らその保守的な外壁を乗り越える。まさに avant-garde。

ゆえにこの街を巡るのは、ある人物の精神の軌跡をたどることに等しく、街の中心にある時計台広場の時計が刻んでいるのは、その心音だと。そしてそこに常設されたメリーゴーランドの前に立つと、4年前に同じ場所で見た映像が自然とフラッシュバックされるのは、それがその場所に埋め込まれた記憶だからで、その記憶の持ち主こそ、フランスを象徴するあの女性なのだろう。


異常な回転速度のメリーゴーランド
 ...À la prochaine déstination ☛ Arles


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