2011年10月8日土曜日

坂道。このマージナルな空間

おはようございます。

いつものように更新しているような気がするのは気のせいです。

そろそろ三十歳に手が届こうかという年齢にもなると、自分自身の好み・性向がある程度掴めてくるように思います。

そんな歳になるまで…という声も聞こえてきそうですが、自分のことって意外とわからないものですよね。人の欠点ばかり目について、自分のそれには気付かない、なんてことは良くあるのではないでしょうか。

さて、自分自身の好みの話に戻しますと、最近「坂道が好きだ!」と改めて強く思うのです(改めて、というのは以前から以前から好きだったわけでして)

坂の良さはなんといっても風景の劇的な変化が味わえることでしょう。少し歩く(登る)だけで、平坦な場所ではあり得ないような変化に出くわします。それは鳥瞰的な視界の獲得であるとか、家屋のすぐ後ろにそびえる絶壁であるとか、途切れた坂の上に落ちかかっている空であるとか、実に様々です。

坂はこの世とあの世を結ぶ「あわい」の空間、私の好きな言葉では「周辺的な=マージナルな」空間です。

古代・中世には坂の途中に市が立ったことにも、坂の周辺的な性質が表れていると網野善彦氏は言い、坂の町金沢で生まれ育った泉鏡花は幻に戯れる作品を数多く残しています。

すぐそこに見える目的地にたどり着くのに、あっちに行き、こっちに行きと右往左往し、上下に昇降する身体の感じる戸惑いが、そのまま頭にも繋がっているのか、目に見えるものと身体の感じるものとのギャップ、不均衡、そして目に映るものもまためまぐるしく変化していく…。坂は非常に劇的な空間なのです。

すれ違った親子と挨拶を交わして、しばらくして振り返り、仰ぎ見ると、子供の笑い声だけが、どこからともなく聞こえてくる。どんなに人間の住む環境が変化しようとも、そこにある限り坂道は、想像力を刺激してやまない空間であり続けるでしょう。

では、また。
Au revoir, à la prochaine fois!

街中の細い路地を進むにつれ、坂道や階段に変わっていく、そんな道が好きです。 Lyonの旧市街地にて


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