2013年2月19日火曜日

フランス語学習者のための Kindle

Playstation も iPhone も、はじめはクソだったじゃねえか。
重要なのはその時点での完成度ではなくて、未来にかける可能性だ。

とにかく文字がキレイ。これマジです
とまあ、御託を並べてみたところで、私に各種ハードの将来性がわかるはずもない。そもそもKindle の発売元は世界最大の書店、Amazon.com なわけで、ゲーム業界に新規参入したSONY のPlaystation とも、携帯音楽プレイヤーでは圧倒的シェアを誇っていたものの、スマートフォン市場では後発だったApple の iPhone とも状況は違う。インフラ整備が完了しているKindle の一人勝ちは発売前から決まっていたようなものだったろう。

まあ、そんなことはどうでもいいだろう。一般の消費者にとって重要なのは使いやすさだ。それも「どれだけ自分に合っているか」なんて、横暴な価値観によって下される評価だ。なるほど、クソミソに言ったところで、おそらくなにも変わらない。だが、その商品をくさす権利がなくなるわけではないのだ。

Kindle Paperwhite を買ってまだ3日。早急に結論を下すのはよろしくないが、とりあえず現時点における、フランス語学習者から見た良い点、悪い点をそれぞれあげてみよう。誰かがこれを読んで、購入の参考にしてもらえれば幸いだ。

まずは良い点。

・ 「紙のように読める」という謳い文句が誇大広告になっていない、圧倒的読みやすさの e-ink ディスプレイ
・ 仏仏辞書が内蔵しており、ある程度のフランス語学習者であれば、Kindle だけで完結する
・ 20世紀以前の有名作家の作品はほとんど無料か、ただ同然で手に入る
・ 簡単に持ち運べる大きさ。普通のペーパーバックの大きさより少し小さいくらい

次に気になった点、悪い点。

・ 微妙に重い。正確には軽い(213g)のだが、重く感じてしまう。カバーをつけるとより一層だろう
・ 内蔵の仏仏辞書があまりよくない。個人的は Le Robert を使いたいのだが、Amazon.jp では未発売(使用する辞書を選択する機能があり、辞書の普及によってこの点は改善されると思われる。仏和辞書を使用することもいずれ可能になるだろう)
・ 著作権の切れた作者の本が多い代わりに、現代作家の作品はほとんどない
・ ページ送りや単語を調べるなど、一つの動作を行う際に画面が暗転する
・ カバー使用を前提とした作り。Kindle だけを持ち運ぶのは少し怖い

とまあ、こんな感じだろうか。

で、結局のところどうなの?買いなの?と聞かれたら、いろいろと不満点を挙げたものの、「絶対買いだね」と私なら答える。もっとも相手が「移動中でもずっと本を読んでいたい」、活字中毒な人間に限らせてもらうが。

明らかにこれは「移動中の使用」にこそ、最大の能力を発揮する製品であって、家なら普通の本が良い、って人も多いだろう。かく言う私もそんな一人だ。だが、e-ink の技術には圧倒された。この画面で読めるのなら、いろいろ不満はあるにせよこれで読んでもいいな、と思わせるだけの説得力がある。

フランス語学習者にとってはどうか。これは学習レベルや目的によるだろう。私が初学者なら、Kindle で本を読むのは間違いなく投げ出していた。だって、仏和辞書がないんだぜ?今も電子辞書を併用して使用しているものの、その機会はまれだ。残りはすべて Kindle 上で済ませられるからこそ意味がある。

あるいはフランス語上級者であっても、仏文学に興味のない場合はスルーだろう。バルザックだったり、モリエールだったり、サン・シモンだったり、ネルヴァルだったり、ドーデーだったり、ゴーティエだったり、ピエール・ロティだったりに興味がないのなら、避けた方が賢明だ。だって今のところ、そんなのしかないんだもの。

つまるところ、Kindle を買うべきフランス語学習者は、中級から上級レベルのフランス語を習得(仏仏辞書の使用に差支えがないレベル)しており、なおかつ仏文学(それも19世紀までの)に興味のある活字中毒者、ということになる。

そんなのニッチな市場だって?そんなの私だって、Amazon.com だってわかってる。だが「ニッチな市場」の獲得、それこそがネットの普及で最大限にまで拡大された、未来にかける可能性なんだろう。

Au revoir et à bientôt !
 



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