2012年10月15日月曜日

Èze / エズ 観光地に生まれて

10/7 8:00 Nice 発 - 8:35 Èze 着
 
 
観光客の朝は早い。
 
6時半には起きて準備をする。外はまだ暗い。だが、このバスを逃せば次は一時間後。前回は話の流れ上、持ち上げて書いては見たものの、正味の話、そんなに便利なわけでもない。
 
時刻表を見る限り、30分ちょっとでエズの村に着く。だが、そんなはずはないだろう。村はニースからは影も形も見えないし、乗車して10分を過ぎてからも、バスは市街地をあちらこちらに進んで、乗客を拾っている。
 
それがなんとか時刻表通りに着いたのは、2分ばかりの容赦のないフライングスタートと、曲がりくねった山道をスピードを落とさず駆け抜ける、運転手のたぐい稀なるテクニックのおかげだろう。
 
オレ、このバスの運転が済んだら、F1レーサーになるんだ。
 
違う。そんな夢の名残りがこの運転テクニックなのだろう。
 
おそらくこのあたりには、夢破れてその腕を持て余した男たちがゴロゴロ存在して、こんな危険な山道を走るバスの運転手にも事欠かないのだろう。少年たちの夢のサーキット、モンテ・カルロは山を越えたすぐ向こうだ…。
 
話をエズに戻すと、「外から見えない」この特殊性こそ、エズ村が要塞都市として、14世紀頃まで発展していた理由がある。
 
そんなエズの村も、21世紀の観光客たちの目からは逃れられない。
 
Côte-d'Azur の中核都市ニースから30分という立地条件を、ガイドブックが逃すはずもない――必然、村は観光地の体をとる。
 
そこにあるのは四つ星ホテルとみやげ物屋と、観光客向け値段のカフェ。もちろん村の姿かたちは多くが昔のまま残されていて素晴らしい。しかしその美観さえも…いや、よそう。素直な気持ちで観賞することこそ、異文化理解のための最低条件のはずだ。それに、村の最高地にある熱帯庭園からの景色は、掛け値なしに美しい。
 
2時間弱の滞在の終わりに、村の入り口にあるカフェに入った。
働いているのは、高校を卒業したばかりとも思える若い女の子と、その父親らしき人物。
 
給仕に来る彼女の、露わになった二の腕を、素直な気持ちで歎賞しながら、彼女の将来を考えるのは野暮だろう。観光地で生きる意味など、そこで生まれ、死ぬことを選択したものにしかわかるまい。

1,2時間に一本ある、モナコ行きのバスを待つ。15分遅れているが、バスはまだ来ない。
 

エズ熱帯庭園からの風景
 
…La prochaine déstination ☛ Monaco
 


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