2013年1月13日日曜日

Black on Black

マレーヴィチのやつ、やってくれるぜ。

およそ抽象絵画に対する理解力を持たない私にも、その絵画は力強く訴えかけてきた。

1918年発表 『White on white』
1918年、マレーヴィチ40歳の時の作品、『White on white』 。白い正方形の上に傾いた別の白い正方形が重ねられたこの作品は、20世紀――いやそんな枠組みなど必要としない――美術の極北に輝く、青白い星だ。


「Suprematism / シュプレマティスム(絶対主義)」の名にふさわしい厳めしさと謹直さとを備えたこの絵は、抽象絵画の時代を開くとともに、その到達点でもあった。

時は流れ21世紀のパリ。Le musée Dapper では伝統的アフリカ芸術と現代アフリカアートの企画展が行われている。

…ごめん、パリにそんな美術館があることすら知らなかった。

17世紀のオランダ人ユマニスト、Olfert  Dapper の名を冠したというこの美術館、凱旋門からほど近いポール・ヴァレリー通りに位置しており、主にアフリカ芸術の展覧会を定期的に行っている。

この展示の魅力は、「いかにして過去は乗り越えられるか」にあるといえる。

アフリカ芸術が20世紀美術に及ぼした影響は、キュビズムを始めとして決して小さくないものであり、いたるところに散見されるが、さて激動の20世紀、アフリカという大地でどのような発展をみせてきたか、それを知る機会は意外に少ない(これは正確に日本における浮世絵とジャポニズム、そして現代日本のアートの関係に置き換えることができるだろう)。

下の二枚の写真を見較べてみてほしい。どちらが現代の作品で、どちらが昔(少なくとも100年以上前)の作品か、わかるだろうか。

© Archives Musée Dapper, à gauche Dominique Cohas, à droite photo Hugues Dubois

過去と同じ土俵で勝負し、なおかつ昔は存在しなかった新しい要素を付け加えること。過去の超克にはこのような方法もあるのだと、目を開かされる。アフリカ(の伝統)の上に、アフリカ(の現代アート)を付け加える。まさに Black on black

 マレーヴィチが初めて抽象絵画を手掛けてからおよそ一世紀。南の空に黒色の星が、燦爛と輝きを放っているぜ。

Au revoir et à bientôt !


Le musée Dapper のホームページ: http://www.dapper.fr/


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