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アポリネールのサイン |
さて、一方のステファン・ツヴァイク(Stefan Zweig 1881/11/28 - 1942/2/22)。オーストリアのユダヤ系作家で、日本では伝記作家として有名。代表作は『人類の星の時間』とされる(これは以前邦訳がみすず書房から出版されていたが、現在は入手困難となっている――と思ってAmazon を調べてみたら現在は普通に販売してますね)。
多くのユダヤ系ヨーロッパ人と同様、ヒトラー政権の誕生からほどなくしてアメリカに亡命、最終的にはブラジルの地で自殺。
一見なんの関係もないように思えるこの二人の共通点――それは、二人とも2013年に知的財産権が失われ、パブリックドメイン化することである。
1997年からヨーロッパの統一規則として、知的財産権の消滅は死後70年経った後と定められた。
その結果、今年で70年を迎えるツヴァイク、さらにはロベルト・ムージルの作品も(『特性のない男』!)、公共の財産となるわけだ。
ややこしいのがアポリネールのケースで、第一次大戦に従軍し、戦争中にスペイン風邪によって倒れたこの詩人は、「フランスのために死んだ / Morts pour la France」と見なされており、今日までその失効が延期されていたようだ。
注意しなければならない点は、知的財産権が失われるのは、あくまで彼らのテクストのみで、翻訳や注釈はまた別であることだ。
まあ、なにはともかくこれで、『アルコール』が、『人類の星の時間』が、そして『特性のない男』がタダで読める――これは事件だ。今後、20世紀前半に活躍した錚々たる面々の作品がどんどん無償化されていくだろう。
この状況の最上の愉しみ方は、やはり電子書籍だ。Kindle で読みたい本が販売されてない。紙の本と値段がそんなに変わらない?日本の電子書籍事情に関しては、その通りだ。
日本における現時点でのこの端末の存在意義は、世界文学の古典を、「タダで、原文で、(比較的)快適に」読む点にある。lというか、それ以外にはないだろう。仏仏辞書も使えるし。
「電子書籍こそ本の新しい未来だ」と言い切るだけの尊大さは持ち合わせていないが、語学学習者にとって、素晴らしい時代が来たことだけは間違いない。フランスのデジタル図書館 Gallica のように、可能性はとどまることなく広がり続けているのだ。
Au revoir et à bientôt !
サン・ジェルマン・デ・プレ教会の裏手にある、アポリネールの顔。でかっ |
参考サイト
・ アポリネールのオフィシャルサイト。死後85年が経ってオフィシャルも糞もないが、なかなか面白いので、ぜひ。
・Culture Box の記事より。今回の元ネタ。このサイトはフランスの固めの文化情報も発信していて、参考になる。
http://www.francetv.fr/culturebox/apollinaire-et-zweig-tombent-dans-le-domaine-public-en-2013-130457
・フランスのデジタル図書館 Gallica のサイト。
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