10/6 23:40 関西国際空港発 - 10/7 14:15 Nice / ニース着
乗り継ぎで訪れたドバイとさほど変わらぬ気候に困惑を隠せず、ベロアの上着を脱いだのは、窓の外にヤシ科の木の見えるホテルに着いた後。そのとき私は、スーツケースに入れた薄手のセーターが今回の旅行で使われることはまずないと、苦笑いをしながら確信した。
断わっておくが、私の衣類のチョイスが間違っていたわけではない。後日訪れたパリでは、自らの正しさを確認したのだが、それはまたのちの話だ。
いや、おそらく間違っているのはニース市民のほうだろう。声を大にして言いたい、「夏はもう終わった。時代は冬に向かっている」と。
実際のところ冷静になって、日本人的良識とともに考えるならば、そもそも半そで短パンで道を歩いている彼らのほうがおかしいのだ。そんなに暑くないだろ、いやむしろ、その格好、やせ我慢してるんでしょ?と。
なぜそんなにも夏に執着するのか。思うにニースの人々にとって、それこそが街の全盛期の思いで、古き良き時代の記憶なのだ。
フランス随一の避暑地としての地位を確立することは同時に、夏のあとの喪失感もまた何倍にも強く感じることも意味する。
避暑客たちは、夏が過ぎれば元の生活に戻り、10月のニースに取り残されたのはそこに住む住民たちと、季節外れ、流行りに乗り遅れた観光客だけだ。
そんなところにいったい見るべきなにがある?なにもないだろう。あるのはただ、イタリアから出稼ぎに来たフランス語も英語も不完全な革職人の店と、近距離に点在する観光地に向かうための、完全に整備されたバス網だけ。
こんな季節じゃバゲットひとつ満足に買えやしない。
さぁ行こう、流行りには乗り損なったけれど、他のところに行くバスならたんとある。10月のニースはそんな街だ。いや、まぁそれも悪くない…。
…La prochaine déstination ☛ Èze
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