2013年4月3日水曜日

人生、宇宙、すべての答え

ごめんね、『銀河ヒッチハイク・ガイド』は読んでないんだ。

このシリーズにおけるハツカネズミは、すぐれた知性をもった高次元生物がわれわれの三次元に突き出している部分 である。ハツカネズミ達は「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を知るために、全時代および全世界において2番目に凄いコンピュータ、ディープ・ソートを作った。そのコンピュータが750万年かけて出した答えは「42」だった。

この数字がなにを意味するか、様々な憶測と議論がなされてきた。あるものはカート・ヴォネガット・Jr.の『タイタンの妖女』のパロディだといい、また別のあるものは13進法と関連付けて説明しようとする。あるものは、文字数との関連を指摘し(「人生、宇宙、すべての答え」の原文は "answer to life the universe and everything" 。これをスペースも含めて数えると42字になる)、また別のものは…といった具合に枚挙にいとまがない。

だが、正直言ってバカらしい。

唯一賢明なのは、曰くありげな数字を持ち出して来て、それに魅力的なプロットさえ加えれば、あとは読者が勝手に想像で補ってくれることを知っていた、作者のダグラス・アダムズだけだ。

なるほど、本は二度書かれる、とはよく言ったものだ。一度目は作者によって。二度目は読者によって。

このシリーズの小説第一作が発表されたのは1979年。それに遡ることおよそ20年。宇宙はアメリカとソ連の戦争の場だった。どちらが先に宇宙に行くか、なんて、今にして思えば実にしょうもない争いが当時の二大国家間で行われていたのだ。同時にこの時代は、SF小説というジャンルが隆盛を極めたときでもある。

時代は変わった。かつてSF小説が描いていた近未来の風景が、いまや日常的にそこにある。銀色の光沢があるピッチリスーツは来てないけれど、僕らは立派な未来人だ。

その昔、二つの大国が覇権を競っていた。一方はやがてその国自体が地上から消滅し、もう一方の国が信奉する宗教、資本主義の波に、地球上のあらゆる地点が冒されているように見える。両国が競っていた宇宙開発の分野は、国家が主導するものから金持ちの娯楽に代わり、国民的神話ではなくなった。
――やがて金持ちと貧乏人とが、宇宙と地上に住み分ける日がやって来る。

人類初の宇宙飛行士、ユーリ・ガガーリンが残したとされる言葉、「地球は青かった」彼には青い地球の上に、人類世界を東と西に画然と分かつ、一本の線が見えたのだろうか。あるいは21世紀の宇宙飛行士たちには、富と貧しさとを分かつ、別の線が見えるのだろうか。

Au revoir et a bientot !
フランスへ向かう飛行機の窓から


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