著者は Olivier Adam / オリヴィエ・アダン。
1974年パリ郊外に生まれ、現在はブルターニュ地方に住んでいるフランスの若手作家。2004年には Passer l'hiver / 冬を越す でゴンクール短編小説賞を受賞。2006年に来日し、京都のヴィラ九条山に滞在していたが、日本語訳はまだなされていない。
それにしてもひどい話だ。
語り手の僕は学校でいじめられ、父親は20年ローンで購入したばかりの一軒家に後悔しきり、母親に至っては少しばかり頭がどうかしてしまっている。これを読んだ子供たちが人生に絶望しても不思議でない。
もっともこれは通過儀礼 の物語だ。その点、これを青少年向けとするのは全くもって正しい。
ただし、その対象は彼ら家族全員だ。彼らはみな、それぞれにぶつかった困難と、まともに向き合うことができずにいる。
いや、それができないのは大人たちだけなのかもしれない。なにしろ語り手の僕の行動力は、強引なハッピーエンドさえも正統化する力と率直さに満ちている。
新居に引っ越してから近所付き合いもなく、友達もいない母親。そんな彼女をもどかしく思いながらも責めることしかできない父親。なんてありふれた光景。それでいて、解決困難な難題。
結局その状況を好転させたのはなんだったのか?正直いってよくわからない。それは私の語学力不足のせいでもあり、おためごかしのハッピーエンド志向のせいでもあるだろう。あるいは、そういった状況に馴致してしまった、惰性的な生を積み重ねてきたためかもしれない。
それでも子供たちは、最後の場面を、この先ずっと続く人生を照らし出す、希望の光の下に読むに違いない。
Les derniers rayons du soleil viennent s'échouer sur mon visage.
夕暮れの最後の光が僕の顔の上で座礁する。
それはきっと、雨の下で一夜を過ごした一家にとっても、新しい夜明けを予告する残照だろう。
Au revoir et à bientôt !
Olivier Adam |
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