2012年11月3日土曜日

マルグリット・ユルスナール展 言葉のイメージ


Marguerite Yourcenar / マルグリット・ユルスナール(1903-1987)。初の女性アカデミー・フランセーズ会員。20世紀を代表する女性作家で、代表作は『ハドリアヌス帝の回想』や『黒の過程』など。日本では三島由紀夫に関する評論、『三島由紀夫あるいは空虚なヴィジョン』が有名か。2002年に白水社からユルスナールコレクションが全6巻で販売されたが、現在は絶版中。2011年から自伝的三部作が同じく白水社から順次発行されている。

ごめん、ここまで概要を書いたけど名前しか知らない。

読んだことのない作家について、あれこれ知ったような口を利くのはよくない。機会があれば実際に読んで、それから再度彼女についての物語を書くことにしよう。ちょうど、家に唯一あるユルスナールの作品、『とどめの一撃』(岩波文庫)を見つけ出したところだ。これを読んで、それから三部作や他作品に手を出すか、決めるのもいいだろう。

さて、今回はそんな彼女の死後25周年を記念して、フランドル美術館で10月13日から催されている『Marguerite Yourcenar et la peinture flamande / マルグリット・ユルスナールとフランドル絵画』展についての、空想のレビューを。

この展覧会、作家と絵画、どちらに比重が置かれているのか。美術館で、展覧会。なのに作家のほうに重心を傾けているのは間違いない。「絵画は言葉へ向かう」。コンセプトはこれだ。フランドルの画家たちは、作家の創作過程を彩る、色鮮やかな花弁だろう。

しかし、その花の美しさこそが、フランドル美術の底力だ。油絵の技法を編み出し、イタリアを中心とした文化圏が、神の世界や王侯貴族を描いていた同じ頃に、平然と農民の生活を描いていた無体さは、ヨーロッパ絵画の歴史上、特異な位置を占める。フランドル絵画について語るためには、最低でもこのブログ3年分が必要だ。

ユルスナールに同様の地域性が見られるか、なんて問いは論点をずらしてしまう。この展覧会の主眼は、いかにして作家が見るものを言葉に変えたか、ということだ。

Les albums de Marguerite Yourcenar © Laurence Houot / Culturebox

Une exposition étonnante au musée de Flandre à Cassel propose un dialogue entre toiles et romans et montre comment cet immense écrivain, première femme à entrer à l'Académie française, a su déceler ce qui constitue la singularité de la peinture flamande et en extraire l'essence, aussi bien qu'elle a nourri son œuvre, incessant va-et-vient informel entre les images et les mots.

絵画と言葉、そのあいだを絶え間なく行き来することにより、ユルスナールはフランドル絵画の特異性を見抜いており、その本質を取り出し、自らの作品の糧としていたのだった。

A force de contempler ces tableaux, de travailler son regard, elle réussit à pénétrer la singularité d'une œuvre.

それらの絵について熟考を重ね、飽くことなく視線を注ぐことで、彼女は作品の特異点に達することができたのだ。

絵画の中に主題を探し求める姿勢。そんな抽象性よりも私には、旅行する先々で美術館を訪れ、ポストカードを買って行ったという、ユルスナールの姿のほうが、親しみやすく、好ましい。そう、その姿こそ、『世界の迷路』を手さぐりで彷徨い歩いていく、人間らしい姿だから。

Au revoir et à bientôt !


Marguerite Yourcenar le 15 décembre 1980
Marguerite Yourcenar le 15 décembre 1980 © Sam Bellet / La Voix du Nord

参照URLhttp://www.francetv.fr/culturebox/des-images-aux-mots-marguerite-yourcenar-et-la-peinture-flamande

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