2012年11月9日金曜日

Louvre 拡大号 アングルのヴァイオリン

不思議なこともあるものだ。

仏検に向けての勉強の合間に、手元にある本につい手が伸びてしまい、しばし時間を費やしてしまう。

Philippe Labro / フィリップ・ラブロ著 『Le petit garçon / 少年』。作家、ジャーナリスト、映画監督、ひいてはジョニー・ホリデイに楽曲を提供(作詞)するなど、多彩な才能を持つ作者の自伝的小説。この作品で1990年のゴンクール賞候補に挙がったが、惜しくも落選する。もっとも、これだけ多才な人物のこと。最高峰とはいえ、たかが文学賞の一つや二つ受賞できなかったところで大したことではなかっただろうと想像する。

自伝的小説である以上、作者の人となりを知りたくなるのは当然だろう。小説の舞台は出身地の Montauban / モントーバン。スペイン国境に近いこの街は、別名 " Cité d'Ingres " アングルの街 と呼ばれている。そう、モントーバンは新古典主義の画家、Dominique Ingres / ドミニク・アングルの出身地でもある。

 ルーヴル美術館にはアングルの作品が溢れている。質量ともに比肩しうるのは、同じく新古典主義のダヴィッド、同時代のロマン主義者、ドラクロワぐらいなものだろう。

上記二人と比べてみても、いや、だからこそなおさらなのか、アングルの描く絵は、描線の端正さが目につく。「絵画とはつまるところデッサンに還元される」と考えていた彼にとって、それは必然だったのだろう。

個人的には、同じく描線に特徴がある20世紀オーストリアの画家、エゴン・シーレが思い出されるのだが、いかがだろうか?シーレは、20代前半の私にとってのアイドルだったのだが。


それにしても偶然の出会いとはおそろしい。

今日フランス語の勉強中、「趣味」にあたる言葉を探していたら、"violon d'Ingres" なる表現に辿りついた。直訳すれば、「アングルのヴァイオリン」どうやらこの言葉、彼にヴァイオリン奏者としての一面もあったことから、「余技」の意が与えられているらしい。

願わくば私のフランス語能力も「アングルのヴァイオリン」と呼び得るほどに上達せんことを…。
――さて、勉強するとしようか。

Au revoir et à bientôt ! 
エゴン・シーレ 『ほおずきの実のある自画像』

 

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