2012年11月7日水曜日

Louvre 拡大号 Claude Lorrain 安寧の画家

10/12 9:30 - Musée du Louvre

ルーヴル美術館を3時間で巡る、というのは無作法を通り越してもはや罪深い。それは人類史を一人一人の人間にスポットを当てながら、3時間で振り返る、といっているようなものだろう。

まさに言語道断の語義矛盾。

正直そんなことは不可能だ。そんなことはわかっている。だが時は有限だ。与えられた時間の中で、人間はなんとかやりくりしてやっていくしかない。なにを選び、なにを捨てるのか。人生で幾度も繰り返されるこの問いに、フランスでもまた悩まされる。

本名を Claude Gelle / クロード・ジュレ、出身地からClaude Lorrain / クロード・ロランと呼ばれる画家(1602頃 - 1682)。彼と前回のニコラ・プッサンのために今回のルーヴル短期滞在は計画された。

彼の絵に説明はいらない。次の二枚を見比べてみてほしい。相違よりも類似の部分が目につく。


 それぞれが歴史的な瞬間を描いたものだが、前景に配された歴史上の題材は、単に風景を描くための方便にすぎない。それが、観ている人にも感得される。

彼にとっては朝日が昇り、夕日が沈む時間帯こそ、世界がもっとも安定する時間であり、画家はその完全なる世界を描くことにだけ力を注いだのだ。

選択と集中、そして持続。これほどまでに一事に収斂にされた画家もいない。その明確さ、安心感こそが同時代にも受け入れられた、彼の人気の秘密だったのだろうか。いや、そうではないだろう。

ターナーに甚大な影響を与え、後世の印象派の礎とも呼ぶべき画家。彼の絵を観て我々が率直に感じる安寧は、人生の幼少期の思い出に重ねられる。だからこそ懐かしいのだろう。

夕暮れには常に子供の遊びがついて回る。夕日が本来象徴するイメージとの乖離が、なおさらのこと希少で、手に入れがたいものとして、それを輝かせる。

そう、クロード・ロランがその作品で描く景色は常に、我々の「失われたなにか」を刺激してやまないのだ。

Au revoir et à bientôt !
同じ構図、同じ景色。同じ思い出


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