2012年4月4日水曜日

映画 『シェイム SHAME』

―― À une amie cinéphile
おはようございます。

映画 『シェイム SHAME』 を観てきました。そんなわけでまずは、この動画をご覧ください。


「セックスを隠れ蓑に、男がひた隠しにする本当のシェイムとは…」

とまあ、こんなことを言われたら当然、「本当のシェイム」探しをしながら映画を見る羽目になってしまうでしょう。そして、見事に肩透かしをくらう。気になってネット上でGoogle検索「シェイム ネタばれ」 、いくつかヒットするもどれもイマイチ釈然としない。
となると、私も新たな解釈を付け加えて、今後観る人を混乱に陥れる一助を買ってもいいじゃない、ということでこの文章を書いているわけです。
また、この文章は私一人の解釈だけでなく、映画狂の友人の意見を多分に取り入れています。友人に感謝。ありがとう。

まだ観ていない人へ。この映画を本当に楽しみたいと思うのなら、「本当のシェイム」探しをしながら観るのはもったいないと思います。純粋にセックス依存症の男を描く作品として観るのが一番面白い。

*ここからネタばれ。内容について書きますので、観てない方は注意を。

まず家に何度もかかって来る電話。最初は関係を持った女性かと思いましたが、どうも母親らしい(根拠らしい根拠はない。妹と同じ表現「私よ」を使っていることからの推測。これがアイルランドなまりだったりするのかな)。で、主人公は会うことはおろか、話すことさえ拒んでいる。

それから妹の登場。電車を待つシーンなど、如何にも恋人同士の雰囲気であり、どうも兄と妹の近親相姦関係を暗示しているのですが、これは観客のミスリーディングを誘っているのではないか。理由は、過去にそのような関係があったとして、主人公の抱えているような闇の原因としては如何にも弱いこと、また今現在二人のあいだで近親相姦関係があったとして、別にそれを非難する謂われがなにもないこと、です。
しかし、二人のあいだに性的ほのめかしがあることは間違いない。

で、妹が兄の上司と性的関係を持つシーン。妹は兄のベッドで上司と交わり、兄は隣の部屋の隅でうずくまり、うろうろし、そして部屋を出る。そして少し後で出てくる「あなたには私と変態の上司しかいないのよ」というセリフ。なぜここは、「あなたには私しかいないのよ」ではないのか、が問題になると思います。また、「既婚」に対するいくつかの暗示。

ここで暗示されているのは、唯一映画内で一度も登場、言及されることのない「父親」の存在でしょう。そして上司は権威との関係で父親と等記号で結ばれる。

つまり、この状況が昔にも、家庭内で行われていた、父と妹の近親相姦、それを見ている兄、という構造。
で、これでもまだ「本当のシェイム」と呼ぶには弱いと思うのです。それだけなら「トラウマ」とは言えるでしょうが、「シェイム」ではない。

そういうわけでもう一点。主人公はそんな父親を模倣しようとしている節が伺えます。それは、高層ビルの窓にセックスをしている男女を見たあと、自分でも試み、実際に行うところ。あるいは父親のドンジュアン的性質を受け継ごうとしている点。

ここから、主人公は父親の立場になりたい=妹とのセックスを望んでいる、そんな自分を嫌悪している、という解釈が成り立ちます。

上述したような家庭環境にあり、妹と二人アイルランドからアメリカに移民してきた。妹はその過去のトラウマのせいか、頻繁にリストカットを行い、恋愛中毒になり、兄に依存する。ただしそこに恋愛感情はない。そんなことは考えられない。そんな妹を愛してしまう兄…。

とまあ、こんな解釈なら「本当のシェイム」として主人公が葛藤するのも納得できるのではないでしょうか?もっとも推測の部分が多く、確定はできません。そういう風に考えさせる映画になってます。これを見られた方、他にも面白い解釈がありましたら教えてください。

では、また。
Au revoir, à la prochaine fois!
 

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