2013年7月10日水曜日

居酒屋プロ野球

プロ野球は、祭りだ。

退屈な日常に一点の非日常を。そんな紋切り型の表現を持ち出してしまうほど、プロ野球はカーニバルしていた。

6/29 (土)14:00~ のオリックス×楽天9回戦。内容は正直凡戦だったが、「プロ野球とはなにか?」を知るには十分だった。だってこれが、人生初のプロ野球観戦だったから。

バファローベル、最高やん。

いや、そうじゃないだろう。現代社会におけるプロ野球の立ち位置をどこに求めるか?バフチンのカーニバル論を借りてきて語ろうか?――一言でいえばそれは、価値倒錯の場である。階級的差異の消失とそれに伴うカオス、充満する放埓さであり、日常の不満のはけ口としての祭りであり、革命のさ中断行された王の斬首である――なんて。

たしかに、いくらかはそんな要素もある。年収400万のサラリーマンが、年俸4億のプロ野球選手を野次るリアル。これが拝金主義の現代における、実にうまくパッケージ化された価値倒錯の仕組みでなくてなんだろう?

もちろん実際に価値を転覆させるつもりはない。野次る観客の誰ひとり、4億の責任を背負ってバッターボックスに立つ気概はない。反対の立場を引き受けるのはつまるところ、ギロチンの下に自らの首を差し出す覚悟を持つことだ。それが可能なのはフィクションの中でだけ、現実の革命はいつも、少しばかり重すぎる。

言ってしまえばここは居酒屋みたいなものだ。ちょっとした入場料と引き換えに得られるカタルシス。ビール片手に選手をディスるその姿は、「今度上司にガツンといってやりますよ」と管を巻くのと同じくらい空疎だ。今度っていつよ?――未来永劫来ない時空間に置き去りにされた一点のことさ。

だから苦い現実から目をそむけて、ありもしない幻想に身を任せるのだってアリだ。隣に座った女の子がチラチラこちらを見る視線を感じて、「この子もしかしてオレに気があるんじゃね?」なんてバカなことを考えられるのは、思春期の男子とほろ酔い加減のオッサンにだけ与えられた特権だ。彼女の見ているのはたぶん、異常に繁茂した君の耳毛か、全開になった股間のファスナーだ。

そうだ、性的な放埓さも、ここでは少しだけ許される。まったくそんなつもりのない女の子に向けられる、真摯なアプローチ合戦。打球の行方には見向きもせずに、ビールの売り子のケツを追っかけるオッサンたちの視線は、彼女が通り過ぎた後に交わり、火花散る。球場で消費されるビールの8割が、男たちの泡のような期待で溢れ出す。7回の表裏で放たれるジェット風船は、バファローベルを孕ませんと狙う幾百万の精子の直喩だ。

職業野球を横目に繰り広げられる男たちの不毛な争い。諸君、これがプロ野球だ…。


Au revoir et a bientot !
6/29 京セラドームにて
参照:オリックスバファローズ公式ホームページ

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