2012年12月2日日曜日

Louvre 別館号 金沢 - SANAA - ランス

もう少しだけ、ルーヴル美術館の話をしよう。

12月4日、ルーヴル美術館の別館がフランス北部の炭鉱都市、 Lens / ランスの街に誕生する(一般開放は12日から)。

この分館にいわゆる常設作品はなく、パリの本館から借りだす形をとるようだ。ジョルジュ・ドゥ・ラトゥールやフラゴナールといった面々の他にもなんと、フランス革命の精神をそのまま描き出したといえる、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』までもが貸与されるという。これは、事件だ。

最初の構想が練られたのは今から約10年前の2003年。当時の文化相 Jean-Jacques Aillagon が首都パリに一極集中した諸機能を地方に移譲する政策の一環として発表。当時は7つ(後に6つ)あった候補地の中から最終的にランスが選ばれたのが2004年。

2005年にはコンペティションが実施される。このコンペで見事優勝したのが日本の建築家ユニット、SANAA。Sejima and Nishizawa and Associates の略であり、妹島和世西沢立衛の二人からなる彼らは、金沢21世紀美術館の設計でも知られる。

21世紀美術館ができた当時、私は金沢に住んでいて、街のど真ん中にできた円形の美術館と、その集客力に大いに魅了されたものだ。

それから10年近く。その間に日本ではより東京一極化が進んだように思われる。毎年金沢には友人を訪ねているが、そのたびに閉店したまま埋まらない空き店舗が目についていた。

しばらく前から政治の上で「地方分権」は叫ばれているが、どうも当面実現しそうにない。今回の衆議院選でも、主要な議題でないのは明らかだ。

フランスもまた、ヨーロッパでは特に中央集権が顕著な国として知られている。それでも、ここ4年のあいだに3度フランスを訪れ、その都度地方都市の活気を肌で感じてきた。それには、中央に集められた権力の側が、たとえ上からにせよ、その権力を委譲しようと積極的な働きかけを行ったからに他ならないだろう。Louvres-Lens はその最たる例といえる。

政治家はよく、「日本再生」などと声高に唱えるが、それには東京だけが繁栄し、地方は衰退する一方の今の形が好ましくないのは自明だろう。今回のルーヴルの取り組みも、政府主導で行って、実現までに10年を費やしている。日本で似たようなニュースが紙面を賑わすことになるのは、果たして何年後の話だろう?

Au revoir et à bientôt !

Le public défile devant "La République guidant le peuple" de Delacoix au Louvre Lens
© PHILIPPE HUGUEN / AFP
 
 

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