2012年12月11日火曜日

嘘つきの恋

イェーツ?知ってるよ。詩人だろ?

と私も思ったのだが、今回はまったくの別人、Richard Yates / リチャード・イェーツについて紹介したい(ちなみに詩人のほうは、William Butler Yeats / ウィリアム・バトラー・イェイツ。1923年にノーベル文学賞も受賞している。日本では岩波文庫から対訳詩集が出ているので、それを読むことをお勧めする)。

Richard Yates / リチャード・イェーツ(1926-1992)。3歳のときに両親が離婚。高校の頃からジャーナリスト志望で、高校卒業後は軍隊に入隊、第二次世界大戦に従軍する。1946年、ニューヨークに戻りジャーナリストとして活動を開始。ゴーストライターとして、ロバート・ケネディ司法長官のスピーチ原稿を書いたりもしたらしい。

文学界に現れるのは1961年の『Revolutionary Road  / La fenêtre panoramique(仏題)』によって。この作品、サム・メンデス監督の下、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットのタイタニックコンビで2008年に映画化されている。ケイト・ウィンスレットはこの作品で、第66回ゴールデングローブ賞主演女優賞 (ドラマ部門を)受賞。

生前彼の小説は、批評家からは絶賛されるものの、世間からはほとんど無視された状態だった。評価され出したのは死後のことで、Stewart O'Nan が1999年、Boston Review に寄稿した"The Lost World of Richard Yates: How the great writer of the Age of Anxiety disappeared from print" が再評価の始まりである。
 ここまでWikipedia(fr)から抄訳。URL: http://fr.wikipedia.org/wiki/Richard_Yates_(auteur)

略歴を見ると同世代の作家、レイモンド・カーヴァーの影がまとわりついて離れないが、まあそれはいいだろう。一日に煙草4箱を吸うヘビースモーカーであり、アルコール中毒であった彼が書いた作品の登場人物にはいつも、敗北者の雰囲気がまとわりついている。儚く散った幻や中途半端に終わった宿命、上手くいかない人生に諦めてしまった野心…。

過去は苦く、未来はどんずまり。そんな冴えない人物が主人公の小説が、面白くないわけがないだろう。

人生には失敗と断念と、そして苦しみしかない。そう語りかけてくる彼の小説はホッパーの絵を思い出させる。人々はカップルだったり、集まっていたりするのに、どこかいつも寂しげだ。イェーツは絵の中に、ウィスキーの瓶を付け加える。飲まずにはいられないのだ。

これは人生の敗残者の物語だ。そして彼の失敗は取り返しがつかない。おそらく作者自身の生が色濃く投影されているのだろう。それはただひたすらに、苦い。

これが飲まずにいられるかい?
Au revoir et a bientot !
『夜更かしの人々
 
 
<注>今回のブログの内容のほとんどは上記参照サイトの翻訳に過ぎないことをここでお断りしておく。これは1981年発表の« Liars in Love » のフランス語訳 "Menteurs amoureux" 発売に合わせた記事である。現時点でRichard Yates の小説の邦訳はなく、Wikipedia の記事も日本語版は存在しない。私個人としては近いうちにフランス語で読んで、感想をかければと考えている。


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