古今東西小説に関する様々な本が出版されてきた。そして最後にはいつも、「才能とはなにか」なる問いに行きつくのが常だ。なぜだろう?
答えは簡単だ。それらの本を書くのが小説家として成功した人々だからであり、彼らは当然、「自分には天賦の才がある」と思いたがる。
それに対し、本書の著者であり、世界的に著名なホラー作家、スティーヴン・キングは言う。3流が2流になること、1流が超1流になるには努力だけではどうにもならない。しかし、2流のもの書き(多くの一般的な書き手)が、自己研鑽を重ねて1流になることは可能だ、と。
『書くことについて』と題されたこの本で、キングはその方法論を惜しみなく開示している。多くはキングの経験に基づいた、転用の不可能性が疑われるものだけれど、それは仕方のないことだ。自分の価値観を築くこと、つまり自分のやり方に自信を持つためには、キングの言うように、たくさん読み、たくさん書く しかないのだから。
最初の一章「履歴書」では、自身の生い立ちや作家を目指したいきさつを語り、次の「道具箱」では、小説を書くために必要な道具、語彙(大きさじゃなくて、どう使うか)、文法(副詞はタンポポだ、放っておくとすぐにいっぱいになってしまう)、文法作法について語る。面白いのは次の「書くことについて」と題された一章で、ここでキングは、「なにを、どうやって書くか」を赤裸々に語っている。
「なにを書くか」について、答えは明快だ。自分の書きたいことを書く。それだけだ。
この本でもうひとつ面白いのが補遺その一、「閉じたドア、開いたドア」だ。そこでは具体的に、なにがよくてなにが悪いか、文章を添削して説明している。
小説家志望の若者がこの本からなにを得られるか?たくさん読み、たくさん書くという当たり前のことと、小説の方法論は自分で学びとるしかないことの再確認。実践的に使えるのはこれくらいだろう。
もうひとつ、この本には優れた効能がある。読み終えると否応なしに小説を書きたくなることだ。読者にそう感じさせる以上、これは実に優れた小説作法本である。
Au revoir et à bientôt !
参照:『書くことについて』 / スティーヴン・キング 著 小学館文庫
0 件のコメント:
コメントを投稿