2013年5月14日火曜日

大戦のさ中、地球の裏側で起きる。

はたから見れば彼らは仲の良い姉弟に見えた。

姉のLina が弟の Gerardo をあやす姿を見て、人々はなんて手のかからない子なんだろう、そしてなんて親孝行な娘だろう、と思っていた。5歳の年の差は兄弟にしてはさほど珍しくもない。

だが、母と息子の年の差が5歳しかない、なんてのは人類の歴史上この母子だけだ。

1939年5月14日、ペルーのリマでLina Medina が帝王切開で男の子を産んだ。その時彼女は5歳7ヶ月と20日。もちろん史上最も若い母親だ。

両親に聞き込みを行ったところ、通常は10歳前後で経験する初潮を、3歳にしてすでに迎えていたことがわかる。それはすごい。だが問題はその点ではなく、少女(と呼ぶにも幼すぎる)が類稀なるロリコンの毒牙にかかっていたことだ。

初めは父親が疑われた。それから、知的障害のある兄。どちらも警察に捕まったがその後、証拠不十分で釈放された。

彼女が息子を産んだ直後から、様々な方面からビジネスの話が舞い込む。そのほとんどが好奇心という名の悪辣さに端を発していた。中には、当時ニューヨークで開催されていた万博に子供と一緒に(見世物として)参加すれば、週に1000ドル(*) あげるよ、と持ちかけてくる者までいた。ペルー当局が子供たちを守るために一切の接触を禁じたのは、良心的な判断だといえる。

歴史上類を見ない幼年期を過ごした二人だが、その後の人生に特筆に値するような出来事はない。

Gerardo は1979年まで完全な健康体で過ごした後、40歳で脳髄の病気で亡くなった。

Lina はその後結婚し、1972年に第2子を出産する。彼女は現在も存命中であり、リマの貧しい郊外の一角に居を構えている。

出産から73年が経った今も、Gerardo の父親については口を閉ざしたままだ。

Au revoir et à beintôt !
 
(*) 当時の1 ドルは日本円で3.8円ほど。当時の1円は現在では1618円ほどの価値があるようなので、週給1000ドルとはつまり、1000×3.8×1618=¥6148400 、約615万円になる。

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