2013年3月21日木曜日

Far West !! 21世紀パリのウェスタン

「すでに監視カメラの映像は手に入れた。犯人たちの特定に、そう時間はかからないだろう」

うん、遅すぎる。事件があったのは土曜の夜だぜ。
それからもう5日が過ぎた。便りのないのは良い知らせ、とは言うけれど、続報のないのは捜査の遅滞しか意味しない。

くそっ、ついてねえな、と乗客の一人は思った。久しぶりにパリに出たら、帰りにこんな事件だ。でもパリとその周縁(L'île de France )の地下鉄、RERで起こる事件の数は年間約55000 件一日にあたり150件の計算だ。なにも出くわさないほうが、むしろ幸運な奴だ、と言えるだろう。

「一般的に」とSNCF(フランス国鉄)の広報は言う、「RERのD路線は他の路線に較べて特別危険、というわけではない。どんな交通機関においても平等に、窃盗事件は発生している。むしろ統計的には、窃盗の被害件数自体は減少している」――そんな数字や言葉が被害者にとってなんの慰めになろうか。被害者にとって唯一重要な事象は、自分が財布を暴漢にとられた、ということだけだ。

やつら手慣れていやがった。突然拳が飛んできた、女連れの男が述懐する、かと思うと催涙ガスで目をやられた。彼女の持っていたバッグをひったくり、気がついたときには胸ポケットにしまっていた財布がなくなってたんだ。迅速で凶悪。組織的な犯行だ。

Corbeil-Essonnes 方面の電車に乗っていたんだ、と学生が説明する、電車が Grigny 駅の構内に入るのとほぼ同時に、騒音と叫び声が聞こえた。電車の走る騒音がかき消されるくらいの音さ。それから、プラットホームを減速する車両と並行して走る若い男たちの姿が見え、あとはそう…見てのとおりさ。

まるで野蛮人さ。休日出勤の会社員が愚痴る、若者の集団が見えたとき、車両から車両へとさざめく、恐怖の波が見えた。西部劇に出てくるインディアンのように、蒸気機関車に馬で並走して、雄たけびを上げて自らを鼓舞する褐色の男たち。手に持った槍の穂先を使って、手慣れた動作で自動ドアをこじ開けて、次から次へと車両に飛び乗る。乗っているのは正義のガンマンじゃない、経済破綻寸前の国のビジネスマンだ、銃なんて持ってない。そこかしこで一方的な略奪が始まる。幾人かは抵抗するが、数の暴力には逆らえない。喧騒の後、奇妙なまでの静けさが支配する車内に、男たちが髪飾りに使っていたきれいな鳥の羽が飛び散っている――俺らみんな、毛をむしり取られたニワトリみたいだろ?

3月16日土曜日、夜10時頃、パリ郊外のGrigny-Centre 駅で、顔を隠した20~30人ほどの若者が、RER D線の乗客を襲う事件が発生した。組織だった行動で、目につく相手――とりわけ旅行者を狙って――強盗を働いた。被害者は10人以上に上るとみられる。

「まるで現代社会に対する反抗 / 犯行だ」と事件を担当する警官の一人が自分の意見を述べ、しばらく黙考した後に付け加える、「でもこれは違う」、まるで他人の意見に同意するように頷きながら、「こんなのは普通じゃない」。

Au revoir et à bientôt !
 
今回の記事も上記のニュースに拠りながら、必要に応じて手を加えている。どれくらいかって?7割だな。


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